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愛用楽器と雅楽への責任new !

 我が家には代々もち伝えている雅楽の楽器がたくさんあります。それらを見ていると先祖代々大切にしてきた想いを感じます。また昔の楽器には素材のいいものを厳選していたりして本物の力や美しさも品格も感じます。大切にしたいと思います。
古くて価値のあるものはいろいろな面で気を使うので頻繁に外に持ち出すことはありませんが、いろいろなものを臨機応変に使い分けます。
篳篥は自作もしました。音程や音量など理想的ものに近づけるために何度も自分で試しながら作ったのでかなりいいものができました。漆の扱いも自己流ですが器用なのです。
それから篳篥を収める管箱も自作しました。

 笙や篳篥、龍笛だけでなく、琵琶、箏、和琴、太鼓、鞨鼓、鉦鼓、三の鼓など全ての楽器が揃っています。我が家の系統の東儀家は江戸時代には江戸城に詰めていたので、幕末に徳川慶喜から授かった楽器がたくさんあったのです。しかし第二次世界大戦の時の空襲でそのほとんどが焼けてしまったのです。かろうじて手で持ち運べる管楽器や古文書だけは防空壕に運べたので助かったのですが、太鼓や箏などの大きなものは消滅してしまった、ということです。それがとても無念なことなので、少しずつ当時のように我が家で再生していこうと思い、個人的に揃えていったのです。打ち物(打楽器)と琵琶は新たに注文して作ったものですが、そのほかのものは古いものを探したり、いろいろな縁で出会って我が家にやって来たものたちです。これから代々大切にしていきます。ちなみに戦火を逃れて我が家でもち伝えている楽器の中には慶長時代(秀吉の時代)に作られた笙もあり、とても上品な音がします。僕が普段使っている篳篥も代々使われて来たもので、数百年経っているものもあります。

 頼まれたり、思い立ったりした時にいつでもすぐに本格的な対応できるようにという思いもあり、「しっかり使える本物」を揃えました。楽器ばかりでなく装束や面、舞台に敷く地布まで揃えました。舞楽の伴奏の楽人が着る管方襲装束(かんがたかさねしょうぞく)まである程度の人数分揃えました。このようなものは通常は大きな雅楽団体か神社仏閣などの組織が所有することなので、個人で全てを揃えているということはなかなか有り得ないことだと言われます。管理にはとても気を使うのですが即時対応性を持って雅楽の普及や理解にも貢献していきたいと考えているのです。それも東儀家としての責任と誇りなのです。

 それから雅楽以前の芸能「伎楽」の復興にも関与しています。伎楽はずいぶん前に廃絶してしまったシルクロードの芸能なのですが、東大寺の大仏開眼などでも披露されたというパントマイムのような仮面劇の芸能の一つです。その面など、当時のものは正倉院に保存されています。いろいろな資料を手に入れた中に、面のひとつ一つの断面図や大きさが細かく記されたものがあったのでそれを元に面師や仏師に頼んで当時と全く同じものを再現してもらいました。まだ数は少ないのですがこれからも続けて復元して行くのも僕のすべきことの一つと思っています。
それとは別に我が家にはかなり古い伎楽面があります。正倉院に保管されているのと同じくらい古そうな様子のものです。全体的に色は落ちているのですがよく見るとわずかにもともとの色が残っているところもあります。これらのものも科学的な検証をしていかなければならないと思っています。